那古野の町に佇む喫茶ニューポピーのこだわりと想い。
2019年1月29日、那古野(なごの)の街に新しい、だけどどこか懐かしい“喫茶ニューポピー”がオープンしました。とても居心地のいい空間が広がり、ゆったりとした気分で飲むコーヒーの味は格別です。コーヒー豆の焙煎から卸まで行っているロースターとしての一面もあるニューポピー。コーヒーと意外なものをコラボさせたイベントなども行われています。カフェが流行る中で、喫茶店をオープンした理由をはじめ、コーヒーへの熱い思いをオーナーの尾藤さんに伺いました。
名古屋ならではの喫茶店文化
「喫茶店をオープンさせた理由は単純で、僕が喫茶店生まれだからです。僕が生まれる2年前に、父と母が喫茶ポピーを開業しました。そこに生まれたので、あえて喫茶店をやろうっていうよりも、かっこいい言い方すると、喫茶店のコーヒーが血になってるような感じですね。」
嬉し恥ずかしそうに語る尾藤さんがポピーを継いだのは20代後半。ちょうど同世代がカフェに通い始めたり、経営し始めたりしてる時期で、コーヒーを飲むところはおしゃれなところ、というイメージが着き始めた頃。実は喫茶店は継ぎたくなかった、という尾藤さん。
「喫茶ポピーはお世辞にも綺麗、とは言えないところだった。それが嫌で嫌で。最初はコーヒーを粉で仕入れてたんだけど、これを豆にしてみたら当然”挽く”っていう作業が生まれて、挽いた瞬間香りが漂うことでお客さんの視線がこっちに来るんですよね。それで自分自身もあれっ変わったかも、と思ったし、息子の代になってコーヒーが美味しくなったなって常連さんから評価を受けるようになった。それが次に焙煎をやろうと思ったきっかけです。」
尾藤さんは焙煎を覚えて、焙煎、卸、喫茶の会社を立ち上げ、伏見に喫茶神戸館をオープンさせました。
「そこで気づいたんですよね、おふくろが30何年も守ってきたから、お客さんがいた。なのにそれを自分の力だと勘違いをして、結果は大失敗。お客さんは入るんだけど、回す力がない。そういうのを8年間神戸館で学んで、だんだん自分がやりたいコーヒースタイルと、街で求められてるコーヒースタイルは違うなって気づき始めたんです。」
那古野の街の窓口になる喫茶店
ビジネス街である伏見は特にランチ時はとにかく時間との戦い。こだわって淹れたコーヒーがドリンクバーみたいに扱われて、とにかく早く出すことを望まれることに矛盾を感じ、引越しを考え始めたそう。
「喫茶店って、子供からお年寄りまで来れる場所だと思うんです。おしゃれすぎるコーヒースタンドとか、僕ですら入るの気が引ける時がある。でもこの那古野(なごの)の街に食事に来る人たちってハイクラスの人たち。だから、那古野の窓口になる喫茶店になったらいいなと那古野に決めました。」
県外の人や海外の人も来る街、那古野。お土産として持って帰れる”那古野”というものをイメージしたコーヒー”なごのブレンド”ができないか、と那古野のまちづくりをしている方から依頼されたという尾藤さん。喫茶ニューポピーはすっかり那古野の街の窓口になりはじめているようです。
コーヒー×福祉の新しい形
お店の入り口に置いてある、トリココーヒーと書かれたコーヒーコーナーがあります。思わず手に取ってしまうようなほっこりするデザイン。トリココーヒーとは一体なんなのでしょうか。
「コーヒーの品質にこだわってくれる人はたくさんいる。自分よりも優れている人がたくさんいるのを知ってるから、あえてやる必要はないかなと思ってて。それよりも、おじいちゃんから子供まで来れる場所を作るとか、まだコーヒーを使って形になっていないものを形にするとか、0→1を作っていきたいんです。」
そうして形になりはじめているものが、コーヒーと福祉を掛け合わせたトリココーヒーです。
「焙煎所の近くに福祉施設があって、そこのスタッフからコーヒーでお仕事もらえないかっていう相談があって。なんでか聞いたら、福祉施設で作るもの、そこは焼き菓子作ってたんだけど、焼き菓子を作る、納品に行く、廃棄される、廃棄された代わりに納品する、っていうのをやってるのがすごく無意味に思えるからどうにかしたいって。とりあえず仕事としてやってるだけで、捨てられるものを作ることってすごく虚しいし、継続につながらないと意味がない。それってコーヒーと一緒だなって思ったんです。」
じゃあコーヒーで何かやってみようということで、ハンドピックやパッケージのデザインの仕事をお願いした尾藤さん。一粒一粒豆を選別する手間のかかる作業を障害を持った方たちは丁寧にやってくれたり、デザインをお願いしたドリップパックはプロのデザイナーがデザインしたものより障害持った方がデザインしてくれたものが売れたんだそう。
「今トリココーヒーは力を入れていて、FM愛知さんが次のラインナップをコラボで作ってくれる。ゲストがトリココーヒーを飲みながらトークをしたりするんですけど、障害者の方も自分がかいたコーヒー、作業したコーヒーがラジオで使われてるとめちゃくちゃテンションが上がる。テンションが上がることをコーヒーを通じてやりたい、コーヒーのまだ見ぬ形、可能性を見出すという思いが形になりはじめていますね。」
コーヒーのまだ見ぬ形、可能性をコーヒーで見出したい
他にコーヒーとなにか、ってありますか?と伺うとても楽しそうに答えてくれました。
「まず1つ目がマスプレッソです。枡は1300年前にできた測量の道具。80%の枡が大垣で作られていて、枡を作っている大橋量器さんが運営するマスカフェにお邪魔した時に、ますでコーヒー飲むと、檜の香りとめちゃくちゃ相性悪くて美味しくないから、枡にコーティングしてコーヒーを飲んでるというのを聞いて『もったいない!』ってなって。」
せっかくなら檜の香りと飲めたほうがいい。なにかできることないかなと思ったと同時に「提案します」と枡で飲める専用のブレンドをつくってネーミングも考えたという尾藤さん。
「枡にいれるとうまいことマリアージュして、もはやコーヒーではない新しい飲み物が生まれました。枡って縁起物だから、例えばお正月には枡でコーヒーをいただくとか誰かのお祝いの時は枡でコーヒー飲むみたいな、新しい提案をニューポピーでしてもいいんじゃないかなと思って検討中です。」
「2つ目はコーヒーとラジオ、音楽です。ラジオを聞くってこととコーヒーを飲むってことが似てるって言い始めたスタッフがいて。ラジオは元々好きだったし、今はまだわからないけど、形にできたら良いなと思っています。
今やっているのは、喫茶店のアルバムを作ることです。昔は伝票の裏にコーヒーの卸問屋さんだったり、ちょっとポエムが書いてあって。ニューポピーのデザインはおしゃれに見えそうだけど、おしゃれじゃなくすることをテーマに作っていて。
伝票のポエムもボーッとコーヒーを飲んでいる時に読んでもらう一つのコンテンツとして大事にしたくて。そのポエムも自分で書いたんです。伝票の在庫が切れたら次のポエム、次のポエムって、新しいものを書く、さらにそれを僕が歌って。そしてその曲に合わせた映像を作って。
コーヒーにフレッシュを入れる瞬間だけやクリームソーダの泡が溢れる瞬間、喫茶店の中にあるものだけで撮ってそういう映像ばっかりを集めて、スローモンションで流して、喫茶ニューポピーっていうCMになっています。ファースト、セカンドとかどんどん増やしていきたい。喫茶店のファーストアルバム。販売もしようと思ってます。その時にコーヒーとラジオの形が実現したら良いな、なんて。」
そうわくわくした表情で語る尾藤さんがとても印象的でした。そして、何気なくコーヒー豆の産地の話をしていた時に聞けた、尾藤さんのこだわりにコーヒー愛を感じました。
「パッと産地に電話して生の情報が取れるっていうのをうちは一番大事にしてて、コーヒーって美味しいものは日本ではなかなか作りにくいとされてる中で、電話がつながって情報が得られることは時差がない、自分の所の畑、と言ってもいいようなコーヒーを使いたいなと思ってる。実際に聞かれるかどうか、ではなく、自分たちが理解しているかどうかが大事だなと思います。」
コーヒーを愛してやまない尾藤さんのお店、喫茶ニューポピー。居心地の良いこのお店で1人でも多くの方に素敵なひと時を過ごして欲しいなと思います。
喫茶ニューポピー 店舗情報
住所:愛知県名古屋市西区那古野1丁目36
アクセス:名古屋市営地下鉄桜通線 国際センター駅 2番出口 徒歩8分
営業時間:平日:08:00~18:00 / 土日祝:08:00~18:00
定休日:無休
座席数:39席
CAFE PASS:https://cafepass.me/shops/show/1068848489